買取の相見積もりは何社取るべきか|同じタイプを3社回っても意味がない理由

木のテーブルを真上から見たイラスト。無地の白い紙が3枚並び、濃紺の袖の手が1枚に触れている。横に布に包まれた陶器の花瓶と腕時計とルーペ 査定の仕組み

「3社は回りましょう」とよく言われます。やってみると、3社ともほとんど同じ金額だった。そういう経験をした人は多いはずです。

結論から言えば、増やすべきは社数ではなくタイプです。

  1. 総合リサイクルショップ … 基準値が分かる
  2. その品の専門業者 … 上限が分かる
  3. 素材で買う業者(貴金属など) … 下限が分かる

この3タイプに1社ずつ見せれば、その品の金額のレンジが見えます。同じタイプを3社回っても、見えるのは同じ1点だけです。

理由は同じ品なのに業者で査定額が違う理由に書きました。この記事では、実際の回り方を書きます。

私はリユース業で買取査定を担当し、現在は金・プラチナの買取店を運営しています。査定を受ける側として、どう動くと情報が増えるかを整理します。

なぜ同じタイプを3社回っても揃うのか

総合リサイクルショップ3社は、どこも自社の店頭で売ることを前提に金額を出します。見ている客層が同じで、売り先が同じで、相場観も同じです。

条件が同じなら、答えも揃います。 3社とも8,000円と言ったとき、それは「8,000円が正しい」という意味ではなく、「この出口なら8,000円が上限」という意味です。

出口そのものを変えないかぎり、金額は動きません。

買取の相見積もりは社数ではなくタイプを増やす。総合リサイクルショップで基準値、専門業者で上限、素材で買う業者で下限が分かり、金額のレンジが見えることを示した図
同じタイプを3社回っても、見えるのは同じ1点だけ

回る順番には意味がある

タイプを分けたら、次は順番です。最初にどこへ行くかで、後の判断の質が変わります。

おすすめは、総合リサイクルショップからです。

  • 一番身近で、予約なしで行けることが多い
  • その品の「下から数えた基準値」が手早く分かる
  • ここで断られたら、その時点で品目の性質が分かる

いきなり専門業者へ行くと、提示された金額が高いのか安いのか判断できません。比較対象がない状態で聞いた数字は、ただの数字です。

逆に、最初に基準値を持っておくと、専門業者の金額が「2倍」なのか「1.1倍」なのかが分かります。これが判断の材料になります。

断られたときこそ聞く

値段が付かなかったとき、「価値がないのか」と落ち込んで帰る人が多い。聞くべきはそこではありません。

「うちでは扱えない」は、その業者の出口に乗らなかったという意味です。だから次の質問が有効です。

  • どういう業者なら扱えそうか
  • 扱えない理由は、状態か、需要か、それとも取り扱い範囲か

答えてくれる業者なら、次にどのタイプへ行けばいいかが分かります。断りの理由は、無料でもらえる一番濃い情報です。

持ち込み・宅配・出張の使い分け

相見積もりは、方法によって向き不向きがあります。

方法向いている場面注意点
店頭持ち込み小さく運べる/その場で返事が欲しい往復の時間がかかる
宅配買取遠方の専門業者に見せたい返送料と返送期限を先に確認する
出張買取一軒分など量が多いその場で売る前提になりやすい
写真での事前査定レンジだけ知りたい実物で下がることがある前提で見る

相見積もりに一番向いているのは、写真での事前査定と店頭持ち込みの組み合わせです。写真で候補を絞り、現物は2〜3か所に絞って見せます。

出張買取は、相見積もりには向きません。人が来た時点で「売らない」と言いにくい空気になるからです。一軒分の片付けなど、量が理由で出張を選ぶ場合は、来てもらう前に「今日は査定だけ」と伝えておいてください。

なお、自宅に来てもらう買取(訪問購入)は特定商取引法の規制対象で、書面を受け取った日から8日間のクーリング・オフと、その間の引渡しを拒む権利があります。詳しくは訪問買取・押し買いのトラブル対処に書きました。

査定のときに必ず聞く4つのこと

金額だけを聞いて帰ると、比較ができません。同じ4つを全社に聞いてください。

  1. 手数料はかかるか(査定料・鑑定料・振込手数料)
  2. 断ったときの返送料は誰が払うか(宅配の場合)
  3. 後から減額されることはあるか(あるなら、どういう場合か)
  4. この金額の根拠は何か

4つ目が一番重要です。「どこで売るつもりか」を聞いているのと同じだからです。店頭で売るのか、業者間に流すのか、素材にするのか。答えられる業者は構造で利益を出しています。答えられない業者は、情報の差で利益を出しています。

この見分け方は買取業者の選び方に詳しく書きました。

査定で全社に聞く4つの質問。手数料・返送料の負担・後からの減額・金額の根拠。4つ目が最も重要であることを示した図
金額の根拠を聞くことは、「どこで売るつもりか」を聞くこと

金額は先に言わないほうがいい

「A店では2万円でした」と先に伝える人が多い。これは情報を減らす行為です。

言われた側は、その少し上を出せば勝てると分かります。自社の上限まで出す理由がなくなります。

金額を伏せたまま「御社ではどういう基準で見ますか」と聞いたほうが、返ってくる情報は多くなります。数字を出すのは、最後に条件を詰める段階で十分です。

ただし、嘘はつかないでください。「他社では5万円でした」と事実でない数字を言うと、まともな業者ほど「ではそちらで」と引きます。構造上出せない金額を言われた時点で、話が終わるからです。

宅配買取で複数社に出すときの注意

宅配買取は、遠方の専門業者に見てもらえる手段として有効です。ただし法律の守りが薄いことを知っておいてください。

8日間のクーリング・オフは、自宅などに来てもらう訪問購入に対する制度です。店頭買取はその定義の外にあります。宅配買取の扱いは一律ではなく、実務上は各社の規約で決まると考えたほうが安全です。

だから、申し込む前に次の3点を必ず確認してください。

  • キャンセルはいつまで可能か(査定連絡後◯日など)
  • 返送料は誰の負担か(無料と書いてあるか)
  • 同意前に品物が返ってくるか

ここが曖昧な業者には送らないでください。送ってしまうと、交渉の主導権は相手側に移ります。

心配なことがあれば、消費者ホットライン188(お住まいの地域の消費生活センターにつながります)に相談できます。法律の判断が必要な場面は、弁護士など専門家に確認してください。筆者は法律の専門家ではありません。

相見積もりが向かない場合もある

正直に書きます。全部の品に相見積もりを取る必要はありません。

状況判断
金・プラチナの地金やインゴット相場が公開されているので差が出にくい。見るのは手数料と減額条件
数百円〜数千円の見込みの品往復の時間のほうが高くつく
一軒分の大量の不用品全部を回すのは不可能。高額が見込める品だけ抜く
期限が迫っている(退去など)時間を買う判断も正しい

1社あたり、移動と待ち時間で半日かかることがあります。5,000円の差のために3社回るかどうかは、その人の時間の価値で決めてください。

量が多い場合は、まず品物を分ける作業が先です。順番は実家から一軒分の不用品が出たとき、まず何をすればいいかにまとめました。

断り方を先に決めておく

相見積もりで一番つまずくのが、断る場面です。言いにくさから、納得していないのに売ってしまう人がいます。

先に台詞を決めておいてください。

  • 「今日は査定だけでお願いしています」(持ち込み前・来訪前に伝える)
  • 「家族と相談してから決めます」(その場で理由を説明しなくていい)
  • 「他も見てから決めます」(事実なのでそのまま言える)

理由を詳しく説明する必要はありません。断るのに理由はいりません。

そして、断ったときの態度こそ、その業者の本質が出るところです。あっさり引く業者は、次に売るときの候補になります。粘る業者は、そもそも候補から外してください。

まとめ

  • 増やすのは社数ではなくタイプ。 総合店・専門業者・素材で買う業者の3タイプ
  • 同じタイプを3社回っても、条件が同じなので金額は揃う
  • 順番は総合店から。基準値を持ってから専門業者へ
  • 断られたら、「どういう業者なら扱えるか」を聞く
  • 全社に同じ4つの質問(手数料・返送料・減額・金額の根拠)
  • 金額は先に言わない。 言うと「その少し上」で終わる
  • 宅配はキャンセル期限・返送料・同意前の返却を申し込み前に確認
  • 相見積もりが向かない品もある。 時間のコストで判断する
  • 断る台詞を先に決めておく

なお、見せる前に品物へ手を入れるのは避けてください。磨く・直す・分解するは、どれも査定額を下げる方向に働きます。理由は査定に出す前にやってはいけない5つのことにまとめました。


執筆者:査定ログ編集部

古物商許可:千葉県公安委員会 第441010003240号

家電量販店、ケーブルテレビ営業、リユース業(買取査定)、ITヘルプデスクを経て、現在は金・プラチナの買取店「貴金属高価買取本舗」を運営。

査定実務の範囲:貴金属、楽器、食器、腕時計など、リサイクルショップで扱う一般的な不用品。骨董・古美術の真贋判定、および法律判断については専門外のため、当サイトでは専門家へ委ねるべき領域として扱います。

【利益相反の開示】 筆者は金・プラチナの買取事業者です。この分野については業者の比較・ランキングを掲載せず、知識記事のみを扱います。詳細は運営者情報をご覧ください。

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