「3社は回りましょう」とよく言われます。やってみると、3社ともほとんど同じ金額だった。そういう経験をした人は多いはずです。
結論から言えば、増やすべきは社数ではなくタイプです。
- 総合リサイクルショップ … 基準値が分かる
- その品の専門業者 … 上限が分かる
- 素材で買う業者(貴金属など) … 下限が分かる
この3タイプに1社ずつ見せれば、その品の金額のレンジが見えます。同じタイプを3社回っても、見えるのは同じ1点だけです。
理由は同じ品なのに業者で査定額が違う理由に書きました。この記事では、実際の回り方を書きます。
私はリユース業で買取査定を担当し、現在は金・プラチナの買取店を運営しています。査定を受ける側として、どう動くと情報が増えるかを整理します。
なぜ同じタイプを3社回っても揃うのか
総合リサイクルショップ3社は、どこも自社の店頭で売ることを前提に金額を出します。見ている客層が同じで、売り先が同じで、相場観も同じです。
条件が同じなら、答えも揃います。 3社とも8,000円と言ったとき、それは「8,000円が正しい」という意味ではなく、「この出口なら8,000円が上限」という意味です。
出口そのものを変えないかぎり、金額は動きません。

回る順番には意味がある
タイプを分けたら、次は順番です。最初にどこへ行くかで、後の判断の質が変わります。
おすすめは、総合リサイクルショップからです。
- 一番身近で、予約なしで行けることが多い
- その品の「下から数えた基準値」が手早く分かる
- ここで断られたら、その時点で品目の性質が分かる
いきなり専門業者へ行くと、提示された金額が高いのか安いのか判断できません。比較対象がない状態で聞いた数字は、ただの数字です。
逆に、最初に基準値を持っておくと、専門業者の金額が「2倍」なのか「1.1倍」なのかが分かります。これが判断の材料になります。
断られたときこそ聞く
値段が付かなかったとき、「価値がないのか」と落ち込んで帰る人が多い。聞くべきはそこではありません。
「うちでは扱えない」は、その業者の出口に乗らなかったという意味です。だから次の質問が有効です。
- どういう業者なら扱えそうか
- 扱えない理由は、状態か、需要か、それとも取り扱い範囲か
答えてくれる業者なら、次にどのタイプへ行けばいいかが分かります。断りの理由は、無料でもらえる一番濃い情報です。
持ち込み・宅配・出張の使い分け
相見積もりは、方法によって向き不向きがあります。
| 方法 | 向いている場面 | 注意点 |
|---|---|---|
| 店頭持ち込み | 小さく運べる/その場で返事が欲しい | 往復の時間がかかる |
| 宅配買取 | 遠方の専門業者に見せたい | 返送料と返送期限を先に確認する |
| 出張買取 | 一軒分など量が多い | その場で売る前提になりやすい |
| 写真での事前査定 | レンジだけ知りたい | 実物で下がることがある前提で見る |
相見積もりに一番向いているのは、写真での事前査定と店頭持ち込みの組み合わせです。写真で候補を絞り、現物は2〜3か所に絞って見せます。
出張買取は、相見積もりには向きません。人が来た時点で「売らない」と言いにくい空気になるからです。一軒分の片付けなど、量が理由で出張を選ぶ場合は、来てもらう前に「今日は査定だけ」と伝えておいてください。
なお、自宅に来てもらう買取(訪問購入)は特定商取引法の規制対象で、書面を受け取った日から8日間のクーリング・オフと、その間の引渡しを拒む権利があります。詳しくは訪問買取・押し買いのトラブル対処に書きました。
査定のときに必ず聞く4つのこと
金額だけを聞いて帰ると、比較ができません。同じ4つを全社に聞いてください。
- 手数料はかかるか(査定料・鑑定料・振込手数料)
- 断ったときの返送料は誰が払うか(宅配の場合)
- 後から減額されることはあるか(あるなら、どういう場合か)
- この金額の根拠は何か
4つ目が一番重要です。「どこで売るつもりか」を聞いているのと同じだからです。店頭で売るのか、業者間に流すのか、素材にするのか。答えられる業者は構造で利益を出しています。答えられない業者は、情報の差で利益を出しています。
この見分け方は買取業者の選び方に詳しく書きました。

金額は先に言わないほうがいい
「A店では2万円でした」と先に伝える人が多い。これは情報を減らす行為です。
言われた側は、その少し上を出せば勝てると分かります。自社の上限まで出す理由がなくなります。
金額を伏せたまま「御社ではどういう基準で見ますか」と聞いたほうが、返ってくる情報は多くなります。数字を出すのは、最後に条件を詰める段階で十分です。
ただし、嘘はつかないでください。「他社では5万円でした」と事実でない数字を言うと、まともな業者ほど「ではそちらで」と引きます。構造上出せない金額を言われた時点で、話が終わるからです。
宅配買取で複数社に出すときの注意
宅配買取は、遠方の専門業者に見てもらえる手段として有効です。ただし法律の守りが薄いことを知っておいてください。
8日間のクーリング・オフは、自宅などに来てもらう訪問購入に対する制度です。店頭買取はその定義の外にあります。宅配買取の扱いは一律ではなく、実務上は各社の規約で決まると考えたほうが安全です。
だから、申し込む前に次の3点を必ず確認してください。
- キャンセルはいつまで可能か(査定連絡後◯日など)
- 返送料は誰の負担か(無料と書いてあるか)
- 同意前に品物が返ってくるか
ここが曖昧な業者には送らないでください。送ってしまうと、交渉の主導権は相手側に移ります。
心配なことがあれば、消費者ホットライン188(お住まいの地域の消費生活センターにつながります)に相談できます。法律の判断が必要な場面は、弁護士など専門家に確認してください。筆者は法律の専門家ではありません。
相見積もりが向かない場合もある
正直に書きます。全部の品に相見積もりを取る必要はありません。
| 状況 | 判断 |
|---|---|
| 金・プラチナの地金やインゴット | 相場が公開されているので差が出にくい。見るのは手数料と減額条件 |
| 数百円〜数千円の見込みの品 | 往復の時間のほうが高くつく |
| 一軒分の大量の不用品 | 全部を回すのは不可能。高額が見込める品だけ抜く |
| 期限が迫っている(退去など) | 時間を買う判断も正しい |
1社あたり、移動と待ち時間で半日かかることがあります。5,000円の差のために3社回るかどうかは、その人の時間の価値で決めてください。
量が多い場合は、まず品物を分ける作業が先です。順番は実家から一軒分の不用品が出たとき、まず何をすればいいかにまとめました。
断り方を先に決めておく
相見積もりで一番つまずくのが、断る場面です。言いにくさから、納得していないのに売ってしまう人がいます。
先に台詞を決めておいてください。
- 「今日は査定だけでお願いしています」(持ち込み前・来訪前に伝える)
- 「家族と相談してから決めます」(その場で理由を説明しなくていい)
- 「他も見てから決めます」(事実なのでそのまま言える)
理由を詳しく説明する必要はありません。断るのに理由はいりません。
そして、断ったときの態度こそ、その業者の本質が出るところです。あっさり引く業者は、次に売るときの候補になります。粘る業者は、そもそも候補から外してください。
まとめ
- 増やすのは社数ではなくタイプ。 総合店・専門業者・素材で買う業者の3タイプ
- 同じタイプを3社回っても、条件が同じなので金額は揃う
- 順番は総合店から。基準値を持ってから専門業者へ
- 断られたら、「どういう業者なら扱えるか」を聞く
- 全社に同じ4つの質問(手数料・返送料・減額・金額の根拠)
- 金額は先に言わない。 言うと「その少し上」で終わる
- 宅配はキャンセル期限・返送料・同意前の返却を申し込み前に確認
- 相見積もりが向かない品もある。 時間のコストで判断する
- 断る台詞を先に決めておく
なお、見せる前に品物へ手を入れるのは避けてください。磨く・直す・分解するは、どれも査定額を下げる方向に働きます。理由は査定に出す前にやってはいけない5つのことにまとめました。
執筆者:査定ログ編集部
古物商許可:千葉県公安委員会 第441010003240号
家電量販店、ケーブルテレビ営業、リユース業(買取査定)、ITヘルプデスクを経て、現在は金・プラチナの買取店「貴金属高価買取本舗」を運営。
査定実務の範囲:貴金属、楽器、食器、腕時計など、リサイクルショップで扱う一般的な不用品。骨董・古美術の真贋判定、および法律判断については専門外のため、当サイトでは専門家へ委ねるべき領域として扱います。
【利益相反の開示】 筆者は金・プラチナの買取事業者です。この分野については業者の比較・ランキングを掲載せず、知識記事のみを扱います。詳細は運営者情報をご覧ください。


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